卒倒する人が続出…金与正命令「処刑実行」の凄惨な場面

処刑の現場は、卒倒する人が続出するほど凄惨なものだったとされる。
(参考記事:女性芸能人らを「失禁」させた金正恩の残酷ショー

北朝鮮は2005年ごろから、中国との国境付近に、ロシアや中国から取り寄せた電波探知機の設置を始めた。これは、チャイナ・テレコムなど中国キャリアの携帯電話が「国内情報の流出、国外情報の流入」の元凶と見てのことだ。

その後、さらに性能の良い電波探知機に置き換えてきたが、新規導入に絡む不正行為で、国家保衛省の幹部が処刑されたと、デイリーNKの内部情報筋が伝えた。

国家保衛省は、拷問や公開処刑などの手法を駆使して金正恩体制の恐怖政治を支えてきた秘密警察である。その権力は絶大だが、彼らに向けられる監査の目も厳しい。
(参考記事:金正恩氏、最新型の携帯電波探知機の導入を指示

処刑されたのは、国家保衛省の電波探知を担当する10局のハン局長ら8人だ。ハン局長は今月13日夜、平壌市郊外の龍城(リョンソン)区域の国家保衛省10局探知部の運動場で、10局の要員が見守る中で公開銃殺された。(参考記事:女性芸能人らを「失禁」させた金正恩の残酷ショー

処刑の現場は、卒倒する人が続出するほど凄惨なものだったとされる。

実務担当者ら残り7人は、非公開で処刑された。最終的に処刑の命令を下したのは、金正恩党委員長の妹である金与正(キム・ヨジョン)朝鮮労働党第1副部長だという。

事の発端は今年4月中旬のことだ。「どこの国のものでもいいので、電波障壁を築き上げることのできる20万ドル(約2087万円)相当の機器を中国で調達せよ」との指示が下された。7月に機器を取り寄せ、設置した。

ところが、その後に問題が浮上した。新品のはずの機器が、実は中古品だとのいう信訴(内部通報)が提起されたのだ。それに基づき中央党(朝鮮労働党中央委員会)が検閲(監査)を行ったところ、訴えの内容が事実であることが判明した。

実務担当者は、割り当てられた予算が足りなかったとして、「国から指示された台数は20万ドルではどうしようもない。ごまかしたのは間違いだったが、中古を買うしかなかった」と弁明した。

この弁明が真実かどうかはわからないが、北朝鮮では以前から、与えられた予算を何らかの形で浮かせて差額を着服するという手法が広く行われている。例えば、朝鮮人民軍(北朝鮮軍)の食糧担当者は、協同農場で徴発したコメの一部を売り払い、より安いトウモロコシや豆を買い、重量だけ規定に合わせて差額を着服する、などと言った手口だ。
(参考記事:北朝鮮版「不正腐敗との闘い」の致命的な盲点

いずれにせよ、このような弁明が聞き入れられることはなかった。

金与正(キム・ヨジョン)氏は中央党の検閲の結果報告を受け、「党と革命が危機に瀕しているときに、裏切りかねない分子ども」であるとし、実務担当者のみならず、ハン局長まで含めて8人に対する処刑の指示を下したという。

情報筋は「首領(金正恩党委員長)や党の決定事項を、自分勝手に解釈し、任務を遂行するのは、わが国(北朝鮮)で反党、反革命行為だ」と解説した。

よかれと思って行った行為ですら、情状を酌量されないことも多い。家族や同僚の食糧を確保するために、植えられた木を抜いて畑にした山林経営所の作業班長は、金正恩氏の植林政策に反する行為を行った容疑で、処刑されてしまった。
(参考記事:「金正恩の木を抜いたから」同僚思いの作業班長が公開処刑に

処刑された要員の家族は、すべて咸鏡北道(ハムギョンブクト)清津(チョンジン)にある25号管理所(政治犯収容所)送りとなった。ここは、一生釈放の許されない完全統制区域ではないが、生きて出られる可能性はそう高くないだろう。
(参考記事:男たちは真夜中に一家を襲った…北朝鮮の「収容所送り」はこうして行われる