文在寅に迫る「Xデー」…蔚山市長選挙介入事件の全貌

野党・自由韓国党院内代表(当時)の沈在哲(シム・ジェチョル)は2月10日、一連の疑惑と関連して「文在寅大統領の関与事実が少しでも明るみになれば、弾劾を推進する」と宣言していた。

しかしその後、任鍾晳周辺に対する捜査は遅々として進んでいない。

そもそも検察が、任鍾晳の関与を解明しないまま13人を一斉に起訴した背景には、秋美愛(チュ・ミエ)法相による「左遷人事」が影響していた。秋美愛は蔚山市の事件を捜査するソウル中央地検の検事正を異動させ、担当の次長検事を左遷する人事を発表していた。次長検事の発令は2月3日に迫っていたため、検察は異動前に起訴に踏み切ったとみられている。

同年1月2日に就任した秋美愛法相は、同月だけで2回、「大虐殺人事」と呼ばれる検察幹部の入れ替えを強行し、政権中枢に対する捜査に当たっていた人員を地方などに分散させた。

秋美愛はまた、検察の起訴状の公開を拒否して反発を呼んだ。

新型コロナに救われ

韓国法務省は2月4日、事件の核心に触れる内容が記された検察の起訴状を「国会に提出しない」と発表した。検察の起訴状は、国民の知る権利のため、国会を経てメディアにあらかじめ公開されるのが慣例だった。しかし同省は「事件関係者の名誉およびプライバシー保護などを考慮し、今後はほかの事件についても起訴状の全文を公開はしない」として、起訴状の要約だけを公開した。

だが、元判事の秋美愛は野党時代、起訴状の情報をもとに朴槿恵前政権を攻撃するなどしていたこともあり、同省の方針転換は「政権を守るための情報隠蔽だ」との批判にさらされた。